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2015_07
07
(Tue)22:51

『天に届くまで』 (『星がおちたら』おまけ)

『星がおちたら』のおまけ。

あの日の書かれていない時間を、夏彦視点で。








 ふたりで大型ショッピングモールの中をふらふらと歩いていると、花織がふいに何かを見つけたようで、くいくいと手を引かれた。

「ねえ、あれ行ってみてもいい?」

 彼女が指を差す先はイベントホールで、笹が飾ってあり短冊が自由に吊るせるようになっていた。子どもとその親たちで大いににぎわっている。

 普段この行事に関することは徹底的に避けていたのに、なぜだろうと不審に思った。それが顔に出ていたのか、彼女はふっと笑って先に答えを告げた。

「なぜだかね、やってみてもいいかなって思ったの」

 彼女は手を離すと短冊を配っているスタッフに近づいていった。七色の短冊の中からいくらか迷って選んだのは、やはり彼女の好きなピンク色だった。

「何を書くの?」

 ペンを取って書きはじめた彼女の後ろから覗こうとすると、思いっきり睨まれた。

「見ないで。内緒」

 そう言って片手で隠しながらさらさらと願い事を書いていく。なんだかつまらない。ただ、特に悩むわけでもない様子なのが少し意外だった。

 最後まで徹底的にガードをしながら書き終えて笹にくくり付けると、満足そうに微笑んだ。

「ありがとう。じゃあ、ご飯食べに行こう?」

 そう言ってさっさとこの場から離れさせたいかのように、ぐいぐいと手を引いてくる。その勢いに流されながらも振り返ってちらりと見えた短冊にはこう書いてあった。


 “夏彦さんが健やかに穏やかに一年を過ごせますように”


 それは、自身の願望でも、叶わないと分かっていながらふたりのこの先を願う言葉でもなく、ただ、今の自分の幸せを祈る言葉。

 彼女が愛おしいと思った。運命とか関係なく、この目の前にいる花織が、夏彦として。その瞬間、引かれていた手を思い切り引っ張って、倒れ込んできた彼女を後ろから抱きしめていた。

「え、え、ちょっと。なに?」

 花織が慌てた声を出す。イベントブースの影になっているとは言え、いつ他人に見られるかわからない場所でいい大人がやることではない。一瞬だけ力を込めると、すぐに解放する。

「内緒」

 混乱して固まっている彼女の手を引いて歩き出す。花織はわけがわからないといった感じで、変な顔をして黙り込んでしまった。少しだけ仕返しができたようで愉快な気分になった。


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