2014_04
20
(Sun)20:21

『サイカイ~その後~』

「サイカイ」のその後です。日常のほんのひとコマ。超短編。








「おじゃましまーす!」

「ああ」

「へえ、結構広いんだね。これならあたし、いつ引っ越してきても問題ないね」

「まあ、そうだな」

「あたしがここに住む話、大家さんにしてくれた?」

「まだだ。最近会わないんだ。大家さんも忙しいみたいだ」

「そっか。残念。でも早く話してね」

「ああ」

「ええっと、冷蔵庫は……わあ、見事にビールばっかり。立派な人間のおっさんだね!」

「うるさい」

「えっと、あるのは……うーん。これじゃあ、ほとんど材料買わなきゃいけないね。荷物重たくなっちゃうかも」

「持つのは俺だから問題ない」

「そう? じゃあ確認もできたし、早速だけど、スーパー行く?」

「ああ」

「そういえば! 気になってたこと聞いていい?」

「なんだ?」

「このアパートどうやって借りたの? 狐なのに」

「……戸籍も、住民票も全部ある。長老に用意していただいたんだ。あの方には、そういうツテがある。今の俺は本当に普通の人間と変わらない状態だ」

「うそ。ほんと?」

「うそじゃない」

「ねえ、じゃあさ、結婚しよう」

「……は?」

「結婚! 戸籍とかあるなら、大丈夫でしょ?」

「ちょ、ちょっと待て、お前……」

「あたしが相手じゃ、いや?」

「そんなことはない」

「じゃあ、問題ないよね?」

「いや、ちょっと待て」

「なんで?」

「っ……ああ、もう! おい」

「え? ちょ、ちょっと。いきなり投げないでよ。何? これ」

「開けてみろ」

「へ? ……指輪?」

「計画が台無しだ。普通女のほうが気にするんじゃないか? ムードだとかなんとか」

「……」

「でも俺のせいだ。お前を不安にさせてる。こんなこと言っても気休めにしかならんかもしれんが、よく聞け。もう絶対にいなくなったりしない」

「……」

「ずっとお前と一緒にいる」

「……」

「そのために10年耐えたんだ」

「……」

「泣いていいぞ。出かけるのはもう少し後でもいい」

「……っく。う、わあああああ」

「なんだ、その泣き方。ホント変わらないな」

「だって、だって!」

「まあ、いい。気が済むようにしてくれ。俺はお前が笑ってくれるなら何でもいい」

「なんかっ、今日、は、無駄に、優しいね」

「たまにはいいだろ」

「う、うん。ごめん、ね。今日、だけは……許して」

「謝らなくていい」

「じゃ、あ、ありがと」

「ああ」

「……返事」

「ん?」

「返事、聞かせて、よ……プ、プロポーズした、んだから」

「あれは無効だ」

「え?」

「あれは勢いに任せた事故みたいなものだろ」

「そ、そんなんじゃ、ないもん」

「とにかく、あれは無しだ」

「そんな……」

「はあ……今から俺が言うから、よく聞け」

「う、うん!」
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