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2016_09
22
(Thu)22:00

嘘つきは物語の始まり 第四夜『泡沫』


今夜は青い睡蓮の気分。


『嘘つきは物語の始まり』
https://lieisstory.theblog.me/









「ソウ姉さん、依頼よ」

足元から聞こえた声に体を起こすと、枝の向こうですぐ下の妹が紙の束をひらひらとさせていた。

わたしは読んでいた本を閉じてカバンにしまうと、ここ最近のお気に入りだった木を降り始めた。

「はい、姉さんご指名の仕事。普通の人は放り投げちゃったんだって」

紙束を受け取って一枚めくると、確かに奇怪な文章が並んでいた。ぱっと見た感じではいくつもの国の言葉が混ざり合っている、何か古い文献を写したもののようだった。

妹も覗き込んで「うへぇ」と顔を歪めている。

「じゃあわたしは昼ごはんの調達してくるね」

見ていたのは一瞬だけでその後はあまり妹の興味を引かなかったようだ。今滞在している川のほとりのテントへ戻ってしまった。

わたしは先ほどまでいた木の根元に腰掛けるとカバンの中からペンと紙を取り出した。それらを傍らに置いて準備が整うと、じっくりと文をなぞり始めた。

頭の中に文字の海が広がる。ゆっくりと沈んでいけば底なしの世界が待っていた。その中を泳いで漂っているものをひとつひとつ集めてつなぎ合わせていく。

ぴったりとはまったものは光って泡になり、ぱちんと弾けて消えていく。そして自分の中に意味がすとんと馴染んでいく。

すべてに目を通し終わると、掴んだものが散って消えてしまわないうちに急いで書き留めていく。

目に見える形になると安心する。無理やり押し込めるから削ぎ落とされてしまう部分もあるけれど、これだけ残れば十分、という程度には原型を留めている。

気が付いたら空が濃い赤と紫に染まっていた。そこからこぼれ落ちた火で森が燃えている。

ああ、もうすぐ夜がやってくる。そしたら月が支配する世界だ。そして、

「ねーさーん!」

妹の声で現実に戻される。わたしは月と花の世界を閉じてテントに向かった。

あの記憶はわたしだけのもの。わたしにしか見られないもの。それは自慢であり、ただひとり背負う罪でもある。

無意識に触れた髪は、ずっしりと重かった。


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